「頻尿の薬」と「かゆみ止めの薬」
三か月の入院生活で認知症が進んだおばあちゃんは、以前にも増して思い込みや妄想が強くなりました。以前からトイレが近い方でしたが、退院後さらに頻繁にトイレに行きたいと訴えるようになりました。
五分前に用を足しても、すぐにまた行きたいと言います。そんな時は無駄足であることが多いのですが、次は大きい方かもしれませんので一応連れていかなければなりません。五分前の事は忘れていますので「さっき行きましたよ」と言っても不機嫌になるだけです。「寝る前に一応トイレに行っておく」という習慣を覚えていて、ベッドに連れて行ったあと2・3回これを繰り返すこともあります。行ったことを忘れていますので仕方ありません。
尿意を感じる脳のシステムがおかしくなっているのか、起きている間中ずっと五分おきに「トイレに行きたい」と呼ばれることがあり、そんな日にはぐったり疲れてしまいます。そんな事が次第に多くなり、さすがにどうにかならないものかと、糖尿病の主治医の先生に相談しました。
とても丁寧に診てくださる親切な先生でしたので、頻尿に効く薬を飲んでみましょうかと処方してくださいました。しかし残念なことに効果は無く、ひと月の処方で改善は諦めました。結局のところ、膀胱の問題ではなく脳の問題なのでしょう。五分おきのトイレコールに対しては、体力と気力に余裕のある時は極力つきあい、とても疲れている時は様子を見て時々聞こえなかったことにして対処する事にしました。(おばあちゃん、ごめんなさいね)
頻尿と並んでもう一つ、悩まされているのが「痒み」の訴えです。
デイサービスでお風呂に入れてもらうのですが、帰ってから「背中が痒い」と頻繁に訴えるようになりました。しかも、昼間のことは既に忘れていますので「何日も風呂に入ってないから痒い」「なんで風呂に入れてもらえないんだ」と怒り出すことすらあります。
お風呂に入って肌が乾燥するのかもしれないと、入浴後に保湿ローションを塗ってもらうようにしましたが効果がありません。仕方がないので、訴えがひどい時は市販のかゆみ止めを背中に塗ります。刺激のあるタイプの塗り薬はスース―として気持ちが良いらしいのですが、たっぷり塗っているとこちらの目がチカチカしてきます。こんなに塗って大丈夫だろうかと心配になりながらも、おばあちゃんの満足第一でとりあえず塗ります。
湿疹やかぶれ・虫刺されもないのですが、痒みが妄想に発展し、寝室に虫がいっぱいいると言い始めました。さすがに参り、再び主治医の先生に相談して、かゆみ止めの頓服薬を処方していただきました。
これは効果を発揮しました。その後も時々痒みの訴えはあったものの頻度は激減し、デイサービスでも落ち着いて過ごすようになったとの報告がありました。
不要な薬はなるべく飲まない方が良いとは思いますが、このかゆみ止めは必需品となりました。