寝たきり介護で一番困った事~弄便
認知症のおばあちゃんが寝たきりになり、ついに「下の世話」をすることになりました。オムツというものは、我が子の子育て以来です。
ベッドの脇に使い捨て手袋、トイレットペーパー、おしりふきウエットティッシュ、普通のティッシュ、新聞紙そして霧吹きを常備しました。新聞紙は、おむつ交換の時にお尻の下に広げて敷き、これでシーツの汚れを予防します。霧吹きは、便を拭くときにぬるま湯を入れて、洗い流したい部分に吹きかけて使います。これはとても重宝しました。
このお世話セットの中に、洗面器と爪洗い用ブラシが加わったのは、すぐ後のことでした。
圧迫骨折の痛みが取れて少し元気になってくると便も出が良くなり、便が出ると、その便をおむつの中から手で取り出してしまうようになったのです。臭いに気が付いてベッドに駆けつけると、布団や床に便が落ちており、ベッドの柵にまで便が付いています。もちろん手にも着いていますので、古い洗面器にお湯をはりベッドの上で爪に入り込んだ便を洗わなければなりません。
この事態が発生するたびに、着替え、掃除、大量の洗濯物(もちろん下洗いも必要)に疲労困憊しました。その後、介護経験者のお話を聞いたところ、やはりこれが「寝たきり介護」で一番大変な事のようでした。その経験者とは、介護用ベッドをお借りしている介護用品レンタル会社の方で、ご自身の経験から、どの様な対策を取られたのか、またその事態予防の為にある介護用品について教えてくださいました。
そのための介護用品があることを初めて知りましたが、それは、その問題が介護現場では日常的なもので、介護者にとって、とても負担の大きい問題である事を物語っていると思います。その介護用品の中で、予防策として最も有効に思えたのが「つなぎ服」でした。きちんとした仕立てで、気持ちの良い素材で作られていました。我が家のおばあちゃんは幸い寝たきりを脱しましたので購入に至りませんでしたが、もし寝たきりが続いていれば間違いなく購入したと思います。
ある時、テレビや新聞で、この「つなぎ服」が「虐待」と言われているのを知りました。
認知症の患者さんは、下着の中にある不快な物を取り出したい一心で、便を取り出されるのだと思います。「つなぎ服」はおむつに手が入らないため、直ちにそうする事が出来ません(その為に作られているのですから)。患者さんの手の自由を奪っているという点で「虐待」と言われるのでしょう。
それでも、「虐待」という言葉を聞いた時、きっと、介護を体験されていない方の言葉であろうと思いました。現場の介護者の身体的・精神的苦労を目の当たりにした事のある人であれば、とても言えない言葉だと思います。
今、日本では多くの人々が介護に奮闘しています。そして社会の高齢化と共に、介護に直面する人は益々増えていきます。行政に携わる方には特に介護現場の状況をよく知っていただき、社会全体で介護する人・される人を支えて頂きたいと思います。