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呼吸困難からの入院~低酸素血症

突然の呼吸困難

我が家のおばあちゃんは糖尿病ですので、月に一度健診を受け、薬を処方して頂きます。

その日は、ちょうど病院に行く予定の日でした。

朝、起きた時から何だか呼吸がいつもと違います。痰が絡んだようなゼロゼロという音がして苦しそうです。食事が取れない状況で顔色も悪く、素人の目にも危険な状態に見えましたので、とにかく早急に痰を除去してもらい、呼吸できるようにする必要があると思いました。

幸い自宅の隣が病院なので、まだ診療前の時間でしたが先に受付に行き、症状をお話しして痰の吸引をお願いしてから、夫と共におばあちゃんを連れて行きました。

糖尿病の専門医からお隣の内科医にかかりつけ医を変えてから数か月が経っていましたので、普段のおばあちゃんの様子は既にご存知でした。診察室に入り顔色や表情が違うのを見て、動脈血中の酸素を測定されました。すると既に低酸素血症を起こしており、すぐに入院が必要とのことで救急車が呼ばれました。

低酸素血症とは、動脈血中の酸素が不足した状態の事です。酸素分圧の正常値が88±7mmHgのところ、おばあちゃんは70程に下がっていました。救急の医療センターに運ばれた後、お医者様から、見た目以上に非常に危険な状態であるとの説明を受けました。

はじめは酸素マスクによる吸入をしていたのですが、なにしろ認知症ですので、すぐにマスクを外してしまうため、鼻にチューブを着けての吸入です。その時点で100パーセントの酸素濃度で吸引をしているので、それで回復しなければ、後は人工呼吸しかないとの説明でした。

おばあちゃんの症状、年齢で人工呼吸をするかどうかは、すなわち延命治療をするかどうかの選択でもあります。その説明もされた上で、早めに決めてくださいと言われました。

朝からの異常で病院に連れて行き、救急車で運ばれ、今夜が山ですと言われ、息子である夫は少なからずショックを受けていたようです。私にとっても、とてもとても長い一日でした。

お年寄りは、そうして容体が急変する事がよくあるようです。

 

 


認知症介護~高齢者の問診と薬の処方の危険な関係

高齢者の問診の危うさを知る

夫の両親と同居を始めた時、義父母は実に多くの薬を服用していました。義父は悪性リューマチ、義母は糖尿病という病を持っていましたので仕方のないことでしたが、健康オタク的実家の母の影響で薬と無縁の生活を送っている者にとっては、驚くばかりの薬の山でした。糖尿病の薬は致し方ないとしても、便秘と睡眠関係の薬が合わせて5種類もあることには一種のカルチャーショックを感じた程です。こんなに飲んで大丈夫なのだろうか、飲む必要があるのだろうかと、本当に驚きました。

その頃の義父母はそれぞれ一人で病院を受診していましたが、義父の他界後、義母の認知症が疑われ始めた頃からは受診に付き添うようになりました。

初めはお医者様とのやり取りを義母の背後で聞いていたのですが、そのやり取りに事実と異なる内容が時々入ることに気が付きました。説明がうまく伝わらなかったり、思い込みであったり、極端な希望だったり・・・。そして、あの5種類の薬の原因がどうやらこの怪しい問診にあったことがわかりました。

義母は多くの女性悩みにもれず便秘症というか腸に不具合を持っているようで、受診の度に色々と訴えていたようです。そこで軟便にする薬などが処方され、一緒にビオフェルミンが処方されていた時もありました。その時は、合わせて6種類飲んでいたということです。

また、夜、眠れないという訴えも毎回していたようです。若い頃から睡眠導入剤を服用していたらしく効き目が悪くなっており、どんどん処方される量が増えていきました。しまいには先生から、もうこれ以上は飲めませんと言われてなお、もっと出して欲しいと訴えていました。

因みに、何か精神的な疾患があるわけではありません。お布団に入ったらすぐに入眠したいという単なる希望です。

そんな風でしたので、義母の耳が遠い事をよいことに申し訳ないことでしたが、時々こっそりと後ろから先生に小声で口を挟むようになりました。そのうち徐々に受診時のやり取りは嫁の役目となっていきました。

睡眠の薬は結局そのまま入院まで飲み続けていましたが、便秘薬のほうは、同居して野菜中心の粗食が効いたようでしたので徐々に減らし、その後処方していただく必要はなくなりました。

義母は若い頃看護師をしていました。その為か薬に対する信頼が厚かったようです。実際に薬のお陰で人類は様々な病疫から救われているのですが、全く副作用のない薬は無いと聞いたこともあります。過剰な薬は飲まないに越したことはなく、その危険をはらむ問診には早めに付き添って、大切な家族の健康を守りたいものだと思います。

病院の受診ひとつにしても、高く齢を重ねた家族に敬意をはらいつつ、少しずつ寄り添って手助けをしていく必要が出てくるのだと思います。

 

 


認知症介護~高齢者のかかりつけ医選び 1

おばあちゃんの病院遍歴

我が家のおばあちゃんは糖尿病です。糖尿病の患者さんは、ひと月に一度病院へ行き診察を受け薬やインスリンを処方してもらいます。

夫の両親は老後を一人息子夫婦の近くで送るべく、長年住んだ東京を離れ長崎に引っ越して来ました。かかりつけ医も決める必要があります。はじめは総合病院を選びました。歳を取ると色々と疾患が出てくる可能性がありますので、何かあった時すぐに対応できるようにとの考えからでした。

実際、糖尿病の検診に加えて、定期的にいろいろな検査をしてもらえるので安心でした。認知症が疑われた時も相談するとすぐに対処し、薬を処方していただけるようになりました。引っ越しからこの時点まで、八年ほどはこの総合病院に通院していました。初めのうちはお医者様とのやり取りも自分でできましたので介添え無しでも大丈夫でした。しかし、認知症を発症した頃からは話す内容が不確実になり、診察室の中にも付き添いが必要になりました。

そのうちに待合室で長時間待つことが大変になったらしく、長椅子にごろりと横になってしまうようになりました。認知症を発症して人目も気にならなくなったかもしれません。とはいえ他の患者さんもいらっしゃいますし、高齢となって二時間近く座って待つのは実際に大変なことです。そこで、時間のかかる総合病院から、糖尿病専門の開業医にかかりつけを変えることにしました。この頃の認知症はまだ初期の段階でしたので、単に体力的な問題でした。

新しくかかった糖尿病専門医は予約制でした。しかし血液検査などの関係でやはり少なくとも一時間はかかります。丁寧に看てくださる先生でしたので患者さんも多く、結局二時間近くかかることもしばしばでした。ただ、こぢんまりと設備が整っているためトイレに行くのも診察を待つのも楽でした。いったん寝たきりになって以降は、患者用のベッドを利用して待たせていただけましたので大変助かりました。かかりつけを変更した甲斐がありました。

認知症患者の通院の大変さはこの後本格化していきますが、認知症にならずとも高齢者の通院は大変です。本人の体力的な問題はもちろん、お世話をする人の送迎や介添えも必要になってきます。今思えばこの「病院の送迎」が「介護」の入口だったような気がします。

誰もが歳を取り、やがて身体のあちらこちらに支障が出て病院通いが始まります。それは仕方のないことで、長生きすれば殆どの人が通る道でしょう。いずれ自分も誰かのお世話になるのでしょうが、なるべく自立していられるように健康で丈夫でありたいと、介護を通してしみじみと思います。