おばあちゃん、行方不明になる
我が家のおばあちゃんは、買い物が大好きでした。甘いものが大好きで、おやつを買って食べるのが大好きでした。認知症の初期の頃は、まだ、足腰が今よりはるかにしっかりしていましたので、自分で近所のスーパーやコンビニにおやつを買いに行っていました。わざわざ断って出掛けるのが面倒だったというか、なにかと秘密主義(!)だったので、いつの間にか出掛けて居なくなっては、息子である夫に注意されていました。
おそらく、おばあちゃんは糖尿病なので、甘いものを勝手に食べることはイケナイことで秘密にすべき行動だったのでしょう。しかし急に姿が見えなくなると心配です。「出掛ける時はひとこと言ってからにして!」と夫が注意するのですが、姑は「私の勝手でしょ!」と反論していました。実の親子というものは・・・といいますか、我が家の夫と姑は、二人ともストレートに物を言うタイプなので、なかなか大変です。
夫の心配は当たり前で、すでに認知症の初期の症状が現れているのですから、症状が日々どう進んでいくのかわかりません。おまけにおばあちゃんは目も悪いでの、買い物は嫁に任せて家にいてほしいのです。時々は買い物にも連れていくのですから、そこで自分の買い物を済ませてほしいと思うのも当然です。
しかし、おばあちゃんにしてみれば、自分はこれまでと何も変わらず、元気なのです。スーパーもコンビニも見えるくらい近所にあります。そこに自分のお金を持って自分の食べたい物を買いに行って何が悪い!と、そんな気持ちだったのでしょう。それも、ごっともです。そして、そこが、認知症の初期の対応の難しいところです。
とりあえず、おばあちゃんの気持ちを尊重し、おばあちゃんが出掛けるのに気づいたら、こっそり後からついて行くことにしました。買い物がちゃんとできるかどうかも心配です。認知症関連の本によると、認知症の人がお金を払うのを忘れて店を出てしまい、万引きになってしまケースがよくあると書いてあるからです。おばあちゃんが、お金を払い、店を出て、家に向かうのを見届けてから、家に戻るということをしばらく繰り返しました。ところが、ある日、ついにおばあちゃんが行方不明になったのです。
気が付くと、部屋にもどこにもおばあちゃんがいません。また買い物に行ったのだろうと察しはつきます。心配なので、スーパーまで探しに行きました。でも、そこにはいませんでした。コンビニにもいません。家の付近には姿が見えません。夫と二人で手分けして、歩けそうな範囲を探して回りましたがなかなか見つかりません。きれいに区画整理された住宅地で、細い路地が縦横に何本もある地区ですので、こんな時は大変です。
しばらく探していると、遠くの方から一人のご婦人が、自転車を押しながらおばあちゃんと一緒に歩いて来るのを夫が発見しました。その親切なご婦人は、住宅地の道端に座り込んでいたおばあちゃんに声をかけ、とりあえずスーパーのほうに向かってくださっていたのです。
この時も、夫にこってり叱られていましたが、自分が家に帰れなかったという事実を本人の中でどう消化したのか、すっかり忘れてしまったのか、その後も、何度も、探しに行くことを繰り返しました。