高齢者の問診の危うさを知る
夫の両親と同居を始めた時、義父母は実に多くの薬を服用していました。義父は悪性リューマチ、義母は糖尿病という病を持っていましたので仕方のないことでしたが、健康オタク的実家の母の影響で薬と無縁の生活を送っている者にとっては、驚くばかりの薬の山でした。糖尿病の薬は致し方ないとしても、便秘と睡眠関係の薬が合わせて5種類もあることには一種のカルチャーショックを感じた程です。こんなに飲んで大丈夫なのだろうか、飲む必要があるのだろうかと、本当に驚きました。
その頃の義父母はそれぞれ一人で病院を受診していましたが、義父の他界後、義母の認知症が疑われ始めた頃からは受診に付き添うようになりました。
初めはお医者様とのやり取りを義母の背後で聞いていたのですが、そのやり取りに事実と異なる内容が時々入ることに気が付きました。説明がうまく伝わらなかったり、思い込みであったり、極端な希望だったり・・・。そして、あの5種類の薬の原因がどうやらこの怪しい問診にあったことがわかりました。
義母は多くの女性悩みにもれず便秘症というか腸に不具合を持っているようで、受診の度に色々と訴えていたようです。そこで軟便にする薬などが処方され、一緒にビオフェルミンが処方されていた時もありました。その時は、合わせて6種類飲んでいたということです。
また、夜、眠れないという訴えも毎回していたようです。若い頃から睡眠導入剤を服用していたらしく効き目が悪くなっており、どんどん処方される量が増えていきました。しまいには先生から、もうこれ以上は飲めませんと言われてなお、もっと出して欲しいと訴えていました。
因みに、何か精神的な疾患があるわけではありません。お布団に入ったらすぐに入眠したいという単なる希望です。
そんな風でしたので、義母の耳が遠い事をよいことに申し訳ないことでしたが、時々こっそりと後ろから先生に小声で口を挟むようになりました。そのうち徐々に受診時のやり取りは嫁の役目となっていきました。
睡眠の薬は結局そのまま入院まで飲み続けていましたが、便秘薬のほうは、同居して野菜中心の粗食が効いたようでしたので徐々に減らし、その後処方していただく必要はなくなりました。
義母は若い頃看護師をしていました。その為か薬に対する信頼が厚かったようです。実際に薬のお陰で人類は様々な病疫から救われているのですが、全く副作用のない薬は無いと聞いたこともあります。過剰な薬は飲まないに越したことはなく、その危険をはらむ問診には早めに付き添って、大切な家族の健康を守りたいものだと思います。
病院の受診ひとつにしても、高く齢を重ねた家族に敬意をはらいつつ、少しずつ寄り添って手助けをしていく必要が出てくるのだと思います。