おばあちゃんの病院遍歴
我が家のおばあちゃんは糖尿病です。糖尿病の患者さんは、ひと月に一度病院へ行き診察を受け薬やインスリンを処方してもらいます。
夫の両親は老後を一人息子夫婦の近くで送るべく、長年住んだ東京を離れ長崎に引っ越して来ました。かかりつけ医も決める必要があります。はじめは総合病院を選びました。歳を取ると色々と疾患が出てくる可能性がありますので、何かあった時すぐに対応できるようにとの考えからでした。
実際、糖尿病の検診に加えて、定期的にいろいろな検査をしてもらえるので安心でした。認知症が疑われた時も相談するとすぐに対処し、薬を処方していただけるようになりました。引っ越しからこの時点まで、八年ほどはこの総合病院に通院していました。初めのうちはお医者様とのやり取りも自分でできましたので介添え無しでも大丈夫でした。しかし、認知症を発症した頃からは話す内容が不確実になり、診察室の中にも付き添いが必要になりました。
そのうちに待合室で長時間待つことが大変になったらしく、長椅子にごろりと横になってしまうようになりました。認知症を発症して人目も気にならなくなったかもしれません。とはいえ他の患者さんもいらっしゃいますし、高齢となって二時間近く座って待つのは実際に大変なことです。そこで、時間のかかる総合病院から、糖尿病専門の開業医にかかりつけを変えることにしました。この頃の認知症はまだ初期の段階でしたので、単に体力的な問題でした。
新しくかかった糖尿病専門医は予約制でした。しかし血液検査などの関係でやはり少なくとも一時間はかかります。丁寧に看てくださる先生でしたので患者さんも多く、結局二時間近くかかることもしばしばでした。ただ、こぢんまりと設備が整っているためトイレに行くのも診察を待つのも楽でした。いったん寝たきりになって以降は、患者用のベッドを利用して待たせていただけましたので大変助かりました。かかりつけを変更した甲斐がありました。
認知症患者の通院の大変さはこの後本格化していきますが、認知症にならずとも高齢者の通院は大変です。本人の体力的な問題はもちろん、お世話をする人の送迎や介添えも必要になってきます。今思えばこの「病院の送迎」が「介護」の入口だったような気がします。
誰もが歳を取り、やがて身体のあちらこちらに支障が出て病院通いが始まります。それは仕方のないことで、長生きすれば殆どの人が通る道でしょう。いずれ自分も誰かのお世話になるのでしょうが、なるべく自立していられるように健康で丈夫でありたいと、介護を通してしみじみと思います。