認知症患者が外来で病院へ行くという事
我が家のおばあちゃんは糖尿病ですので、月に一度病院で受診し、薬とインスリンを処方してもらわないといけません。引っ越してきて数年は総合病院に通っていましたが、長い待ち時間が体力的に厳しくなり、糖尿病の専門医にかかりつけ医を変更しました。
この専門医の個人病院は比較的新しい病院で、小さいながら設備が整っていました。小ぢんまりとしていますので、待合室から診察室、トイレにも近く、三つもあるトイレは車椅子対応の広さで自動ドアになっています。介添えで一緒に入っても十分な広さですので、検尿の介添えも楽にできます。利用したことはありませんでしたがジムのような体操室があり、生活習慣病予防のプログラムなども行われているようでした。
この病院に通い始めた頃、おばあちゃんの認知症はまだ軽く、普通に待合室で順番を待つことができていました。総合病院より待合室も快適で、頻繁にトイレに行きたがるおばあちゃんにとってはトイレが近くて便利でした。(この頃はトイレも一人で行っていたのだなあ・・と、今しみじみ思い出されます。)
しばらく通ううちに、おばあちゃんは軽いくも膜下出血を起こして入院することになりました。この後、約三か月の入院ののち退院しましたが、身体能力が低下し認知症も進み、要介護度は2から4に上がっていました。それでも身体を支えて歩けるようにまで回復しましたので、月に一度の通院はできました。待合室でかろうじて待つこともできましたが、調子が悪い時はベッドを貸してくださいました。
更に悪くなったのはこの数か月後、圧迫骨折により寝たきりとなってからです。しかしこの時も我が家のおばあちゃんは驚異の回復を見せ、ひと月の寝たきり後、徐々に回復し、支えれば歩けるようになりました。この時は、リクライニングできる車椅子をレンタルしており、その車椅子に乗せて受診しました。待合室でも、車椅子に寝たまま待っていられるので非常に重宝しました。ひと月ごとの受診ですので、先生や看護師さんには行く度に回復している印象だったようです。ただ、自宅でも横になっていることが多くなりましたので、待合室で待つことが難しくなり、必ずベッドを貸していただくようになりました。
身体的には回復していきましたが、認知症の方は残念ながら進んでいきました。妄想に取りつかれている日もあれば攻撃的な日もあります。認知症というものは、感情をコントロールするという作業を脳がやめてしまうようです。
受診すると血圧測定と血液検査がありますが、この検査を拒否したり、ひどい時には看護師さんに暴言や暴力をふるおうとしたりするようになりました。診察までの時間が待てなくなり、「家に帰る」と言い出しては暴言、一人では歩けないのにベッドから降りようとしたりと、先生も見かねて先に診てくださったこともありました。
まず、家から病院に連れ出すまでにも拒否され、ひと苦労していました。そうしてやっとたどり着いた病院でもその有様です。看護師さんや先生にもご迷惑をかけ、付き添いとしてもさすがに限界で、再びかかりつけ医を変えることにしました。
認知症が進んだ患者さんを外来に連れて行くのは本当に大変です。診察の順番を待つことが難しいのです。我が家は有り難い事に、家の隣が開業医です。好き嫌いの多いおばあちゃんの意向で別の病院に通っていましたが、今となってはもうその「好き嫌い」を忘れたらしく、すんなりと受診してくれました。お隣なので待合の空いた時に車椅子を押して連れていき、診察が終わるとすぐ夫に連れて帰ってもらいます。今までの苦労は何だったのかと思うほど楽になりました。
総合病院が安心、糖尿病の専門の方が良いと、以前は病気治療を中心に病院を決めていました。それは当然で大切な事なのですが、認知症の患者さんを通院させるには、受診の順番まで「待てる病院」であることがとても重要であることがわかりました。