なぜそんなに頻繁にトイレに通うのか?
全ての患者さんに当てはまるものではないと思うのですが、我が家の認知症のおばあちゃんは、頻繁にトイレに通います。とても良い運動になっていると感じるほどです。自分で行けていた時は、水道代が増えるくらいしか不都合はありませんでしたが、今となっては、その都度連れていかなければならないので大変です。
そんなに頻繁に行って、毎回、用を足すわけではありません。行って、座り、もともと気が短いので、ほんのしばらく待って紙で拭き、もういいと言って立ち上がる、この繰り返しです。いつ出るのか分からないので、連れていくしかありません。小がめでたく出たとしても、今度は大かもしれないので、行きたいと言えば、今しがた行ったとしても、やはり連れていくしかありません。
何度も同じことを繰り返されるのは、その対応に慣れるまでかなり時間がかかります。辛抱強さが必要です。介護は、気の短い人には向かない仕事だとつくづく思います。「さっき行きましたよ」と言ったところで、本人は行ったことを忘れていますので、『行きたいのに連れて行ってくれない』とストレスを与えるだけです。ストレスは何より認知症の症状を悪化させますので、なるべく与えないようにしないといけません。辛い所です。
汚い話で申し訳ありませんが、筋力の低下で腹圧が弱くなり、自力で出せなくなった便が出口で止まった状態になっていることがあり、それでずっと便意を感じている時があるようです。そんな時は、使い捨ての手袋をして少しづつ摘便します。また、小の方に関しては、たくさん出た数分後、すぐ呼ばれて連れて行き、またたくさん出るということがあります。初めて見た時には本当にびっくりしました。普通の若い身体では有り得ない事です。
つまり、介護者の常識にはない身体の状態が、お年寄りには何かしらある事も、知っておいた方が良いかもしれません。
付き添いが、気持ちを焦らせていたのかも?
何度も何度もトイレに通っていると、さすがにうんざりすることもあります。疲れている時などは辛いものです。
トイレに連れて行き、座ったかと思うと十も数えないうちに拭き始め立ち上がろうとする。「まだ出てませんよ~」と言っても、「もういい!」と怒られる。そんなことを繰り返していましたが、ある時たまたま急な用事でちょっとだけその場を離れました。ややあって戻った頃、ちょうど無事に用が足されました。!!もしかするとトイレまで連れて行って、目の前で立って待っていたので、気が急いていたのでは??試しに、トイレまで連れて行ったあと、いったんトイレの外へ出て待つことにしました。すると、しばらくして、ちゃんと用が足されることが多くなったのです。
そのことを発見した時、おばあちゃんが、介護者である嫁に気を遣ってくれていたのかと、心が少し暖かくなりました。心が温かくなると、介護する気持ちもまた、少し楽になりました。ただの気のせいかもしれません。でも、そう考えることで介護者の気持ちが楽になるのであれば、積極的に楽になる方に考えた方がいいと思います。
介護は、介護者の身体的な負担はもちろん、精神的なストレスとの戦いであると思います。でもそれは恐らく患者さんも同じで、心と身体のコントロールが難しくなり、介護者や周りの状況に上手く適応できなくなると言う事で、それはやはり大変なストレスだと思うのです。そのストレスを本人が自覚しているかどうかは分かりませんが、それが暴言や問題行動となって現れているような気がします。
つまり、お互いがストレスとの戦いなので、お互いがどうストレスを減らしていくのか。それが、介護の最大の課題のように思います。